豊かさとは何か、を問われてる気のする映画「アンデス、ふたりぼっち」。

出演者、完全に二人だけ。(人間以外の動物除く)
劇的な展開がなければ、ドキュメンタリー映画だと思ってしまいそうな、
作意を感じない映画「アンデス、ふたりぼっち」が面白かった。

アンデスの山奥、二人で過ごす老夫婦。
と言うと、のどかで、何事も起きない映像をイメージしてしまうが、
完全に二人で自給自足生活を送るのは、いろいろと忙しい。

耕作も、家畜の世話も、芝刈りも、
衣服を織るのも、雨漏りを直すのも、
神様に祈る儀式の準備や実施も、
誰の手も借りられない。

唯一、火おこしは文明の利器、マッチを使うようで、
マッチが切れかけたことから、物語は動き出すのだが、
そこからは観てのお楽しみにしておこう。

なんでも二人で協力しながらやるのを観てると、
自分がいかに人に頼り切って生きてるのか、恥ずかしくなったりもした。

「二人は忙しい」と言っても、映画には、独特の柔らかく、
ゆっくりとしたリズムが流れている。
それがすごく心地よく、観てて心が晴れていくような気持ちになるのだが、
その独特のリズムには、二人の話すアイマラ語という言葉が、
大きく影響してるように思った。
もちろん、何を喋っているのか全くわからないのだが、
すごく音楽的で、抑揚が美しく、のんびりとしていた。

始まってすぐ、二人が、踊りながら、歌い、笛を吹くシーンがあった。
このシーンで、いきなり掴まれて、好きな映画になってしまった。
歌も、演奏も、踊りも、たどたどしくて、
お世辞にも上手い、とは言えないんだが、
絶対に、この二人にしか出せないもの、
ワシの知ってる言葉で言うとグルーヴ感があって、
それが、とてつもなく人を惹きつけるのだ。

監督のオスカル・カタコラさんは、この一作の長編映画を残して、
惜しくも昨年、34歳で夭折したらしいが、
もっとこの人の作品を観てみたい、と思う、
他で観たことのないような映画だった。

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