自分に正直に、修羅の道を歩く三人。映画「あちらにいる鬼」。
妻と夫と、その愛人。その共存。
言葉にするとあり得なく思えて、エゲツないのだけど、
なんだか観てるうちに「そうするのが一番」みたいな気持ちになってしもたのは、
映画「あちらにいる鬼」。
ちょっと「ややこしいなあ」と思ったのは、
ここまでモデルがハッキリしてるのだから、
実際の名前でやってくれた方が、観ててわかりやすいのになあ、ということ。
まあ、井上光晴さんの奥さんは、一般人なので、
その辺の配慮もあるんだろうけど、せめて井上光晴さんと瀬戸内寂聴さんは、
そのままの名前でやることはできなかったんかな?
去年亡くなられたこともあって、観る前は、瀬戸内寂聴さんが主役の
追悼を込めた映画やと思ってたんやけど、
観てるうちに「これは井上光晴さんが主役かも」と思いだし、
観終わると「真の主役は、井上さんの奥さんかもしれない」と思ってしまった。
そう思うと、奥さん役の広末涼子さんの登場シーンで感じてた
鼻歌への違和感が、氷解していった。
三人が三人とも特異なキャラクターやけど、
その三人が奇跡のような巡り合わせで、関係を築き、
それぞれ、自分の気持ちに嘘なく生きていたんやなあ。
井上光晴さんと瀬戸内寂聴さんについては、
ある程度知識あったので、そう驚かなかったけど、
やはり一番驚いたのは、全然知らなかった奥さんのキャラクター。
映画観た後で知ったんやけど、
原作が、井上ご夫妻のご長女さんなんやな。
そやからお母さんのこと、
そこまで書き込めたんやなあ。
広末涼子さん、今までちょっと苦手な女優さんやったけど、
寺島しのぶさん、豊川悦司さんというクセの強い役者さんと共演して、
負けないどころか、一番の存在感を示してたことで、
少し観る目が変わった。
エンディングの浜田真理子さんの曲は、
映画と完璧にマッチしてて、
この映画のドロドロしたものも含めて、
すべてを洗い流してくれるような気がしました。
そう考えると、この映画で一番怖いのは、浜田真理子さんなんかもしれん(笑)