橋本ヒネモスのBBBムービーvol.23「差別」「生きるLIVING」「青春弑恋」「赦しーゆるしー」。

「差別」。

オフィシャルサイトも予告編も見つからないので、
簡単にあらすじを紹介すると、
2010年から実施された日本の高校無償化政策から、
なぜか除外された朝鮮高級学校の裁判を中心に、
今の在日朝鮮人差別を描いた映画。

もちろん、この差別は不当だと思う。
日本政府側の、のらりくらりとした主張は、
すべて詭弁にしか聞こえなかった。
観てるうちに、この政策には、民族差別に加えて、
共産主義差別が混じってる、
むしろその傾向が強いかも、と思った。
どちらにしろ憲法に反してるのは間違いない。
どんな子どもにも等しく学ぶ権利があるはずなのに、
と思いつつ、なんかモヤモヤするもんもあった。

描き方が、少し、一方的で、感情に寄りすぎてるのではないか。
裁判の結果に涙する高校生や、怒りを露わにする日本人協力者にワシは共感する。
感情への訴えかけは、既に仲間になってる人には、強い共感呼ぶけど、
その反対側にいる人、どこにも属してない人には拒否反応を起こしかねない。
そういう人たちには、理性的な事実も必要なんじゃないか。

なぜ韓国系の学校の話をしないんやろ?
学校のカリキュラムを解説しないんやろ。
あまり関心のない日本の人が朝鮮高級学校にどんな印象持ってて、
それは事実とどう違うか、見せないのだろう。
そういう事実の積み重ねがあってこそ、
外側から見る人は、この差別が不当であることに気づき、
もしかしたら同志として、戦いに加わるのではないだろうか。

そういうある意味の「歩み寄り」がなく、
感情的なシーンを積み重ねるのは、かえって分断を招くような気もする。
そういう意味では、ちょっとショッキングな、そのものズバリの
「差別」というタイトルも、かなり感情的に見えてきて、壁を高くしてる気がした。

たくさんの人が考えるべき問題だと思うからこそ、
少し残念な気がした。

「生きるLIVING」。

公式サイト

エンドロールが流れ出しても、誰ひとり立つ気配がなかった。
見事なまでの余韻。
自分がこの世界に生きていた、ということを、
誰でもなく自分自身が、どうやったら、感じられるのだろうか。
大きさや影響力ではなく、
何が、自分にとって、なすべきことなのだろうか。

黒澤明監督の「生きる」をカズオ・イシグロさん脚本でリメイクしたイギリス映画。
シンプルで分かりにくいところなど、ひとつもないのに、
深みがある、奥行きがある。
なにより気品がある。

主役のビル・ナイが見事なのはもちろん、すべての役者が、
それこそ、この映画の中での「自分のなすべきこと」を
完璧なまでにやり遂げている。

舞台は第二次世界大戦後のロンドンだけど、
この映画は時間や場所を超越して、
すべての時代のすべての人に訴える
普遍的な人間のあるべき姿を示してくれる気がした。

黒澤明さんのオリジナル作品との距離感も素晴らしい。
模倣にならないよう気を配りながら、
敬意を忘れず、大筋は踏襲している。

この映画、観に行く前に黒澤さんの「生きる」観ておくべきやったかな。
今からでも遅くはないか。
黒澤さんバージョン、確か30年くらい前にシカゴ行った時、
英語字幕入りのやつを買ったはずやけど、あれってVHSだったしなあ。
アマプラでもう一度観てみるか。

「青春弑恋」。

公式サイト

観たことのないような構造の、意欲的な映画やったなあ。
スタート位置から、都合ニ周半した感じかな。

関係ない事象が、どんどん絡み合っていく。
混線する。
関係ないはずの人同士が、すれ違ったり、衝突したり。
リアルだけでなく、バーチャルも混じってゆく。

2周目、1周目で蒔いた伏線とかを解いていくのは、
なるほどなるほどとなった。
けど、あれ?全部伏線解いたけど、
残り、まだだいぶ時間あるよ。
どーなるの?
ああ、なるほど。
これが描きたかったわけね。
テクニシャンやなあ!

ずっと主役の女の子以外の人たちも丁寧に描いてたのに、
最後、その人たちがどうなっちゃったのか、どんな心持ちでおるんか、
ほっとくのは、少しもったいない気がするなあ。

考えてみれば、最初の設定自体も、むちゃくちゃ無理あるんだけど、
そこは、置いとこう。

確かに、「クーリンチェ少年殺人事件」のエドワード・ヤンに影響を受けた感じのある
いかにも今の時代の若者を、今の時代の描き方で表した映画だと思う。

「赦し -ゆるし-」。

公式サイト

いやいや、重い映画を続けて観てしまったもんや。
けど、観応えある、すごい映画やったと思う。

骨太で、ようできた脚本やった。
裁判、刑法のあり方を根元から問い直すだけでなく、
被害や加害の捉え方にも迫る作品で、
ひいては戦争被害をどう捉えるか、ということにも繋がる気がした。
つまり、「罪」というものに対する、
人間の根源的な問題に繋がっているのだろう。
そういう意味では聖書からの引用は、正解だと思う。

ある事件の再審をきっかけに動き始めるそれぞれの人生。
少女役の松浦りょうさんの表情が、すげえ強くて、忘れられん。
MEGUMIさんや藤森慎吾さんが、めっちゃええ芝居してたんも、ちょっと驚いた。
ただ一点困ったのは、尚玄さん、演技はええのだが、滑舌がちょい、、
何ヶ所か聞き取れんとこあったなあ。
まあ、ワシの問題かもしれんけど。

多くの人に観て、考えてほしい映画でございました。

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