橋本ヒネモスのBBBムービーvol.31「マウリポリ7日間の記録」「ムイト・プラゼール」。

「マリウポリ 7日間の記録」。

公式サイト

なんで、戦争が好きでもないのに、
はっきり言うと嫌いやのに、
こういう映画、積極的に観てしまうんやろう。

ウクライナ軍ではなく、ウクライナ政府でもなく、
もちろんロシア軍でもなく、
ウクライナに生きる普通の人の目線から捉えた、
爆撃にさらされるマリウポリの町のドキュメンタリー。

始まって、すぐ後悔し始めた。
「このまま、あと二時間近く耐えられるだろうか」。
起伏なく、ドキュメンタリーとは思えない悲惨な光景が、続く。
とりたててスリリングでも、ドラマチックでもない。
ただ淡々と、目の前にある、天災ではなく、人災でできた瓦礫の山を写す。
そこで、キャンプ生活のような人々を写す。
亡くなった隣人の家から、遺体をのけて、使えるものを探す人々を写す。
遠景になると、のんびりとした田舎町のようにも見える。

カメラの目線が、だんだん自分の目線のように思えてくる。
そうか、戦下を生きる現実とは、こういうものなのか。
この映画は、ある意味バーチャル戦争体験なのかもしれない。
望まない、いつ終わるとも分からない毎日を過ごす。

いや、ワシは2時間我慢すれば、この光景が終わることを知っている。
バーチャルでなく、この世界に現実に生きる人とは、決定的に違う。
かれらは、いつ終わるかも分からない、この世界に生きているのだ。
想像すると、たまらない。一日でも気が狂いそうな気がする。
逃げ出したくなる。

しかし映画を観てるうちに次第に、
爆弾の轟音が気にならなくなってきていた。
麻痺。
現実に生きてる人も麻痺してるのだろうか。
いやだ。
こんな現実に麻痺したくない。

いつ終わるか分からなかった、この世界は、7日間で突然終わりを告げる。
カメラを回してた制作者が、親ロシア分離派勢力に拘束され、殺害されたのだ。
なんという終わり方だろう。

本当に、こんな映画、全然観たくないのに、なぜ。
自分でもよく分からないのだが、
「目を背けるな」と頭の中で誰かが叫んでいるのはわかる。

「ムイト・プラゼール」。

作品情報

フィクションなんだろうけど、出演者も、ほぼ自分と同じ背景の役で、
アドリブも多いようで、半分ドキュメンタリーでもある作品なんやろな。

30分くらいの短い本編と、同じくらいのメイキング、
合わせても1時間ほどの作品だけど、
めちゃくちゃ観応えがあった。

生まれた時から、日本国籍を持ち、同じような人の中で育ってきた日本人が、
ブラジル移民のことを知らないのは当たり前かもしれないけど、
辛い経験をしてきたブラジル移民の人たちも、
辛かったからこそ、日本人のことを一面的にしか見てなかったことに気づいて行く。

お互いを知ることの大切さ、
一人一人を人間として見ることの大切さ。
当たり前やと思ってるはずのことやけど、
まだ若くて、経験の浅い子どもたちが、
そのことに気づいて行くシーンは、感動的やったし、
ワシも、改めて、その大切さに気づかされた気がした。
もしかしたら、ワシもちゃんとは分かってなかったんかもしれん、
とも感じた。

移民の人も、日本人の人も、先生たちも、
ぜんぶの出演者の人たちに会って、
話がしてみたいと思った。

大阪では28日までシネ・ヌーヴォーで公開中。
滑り込みで間に合ったけど、ほんま観てよかった。

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