少年、青年、ふたつの男同士の物語。BBBムービー「クロース」「大いなる自由」。
しばらく主催イベントが続いてて、
落ち着いて映画を見られる気がしなかったので、
20日ぶりくらいに映画を観に行った。
内容的には、全然違う映画なんだけど、
ポスターが似てたので、まとめて感想を書きます。
「クロース」。
子どもが少年になる繊細な時期を、丁寧に描いた映画やと思う。
けど、ただお涙頂戴のセンチメンタルな映画ではなく、
後悔の苦味や喪失の痛みを抱えたまま、生きていくための映画なんやろうな、と思った。
前半、少年二人、どちらの気持ちも痛いほど分かって、
観てて、辛いやら切ないやら。
二人とも素直な少年で、相手を大切に思ってるんやけど、
少しだけ、感じ方や成長のスピードが違う。
それが、取り返しのつかない事態を招いてしまう。
誰も悪くない。
誰も誰かを傷つけようなんてしていない。
主要人物だけやなく、周りの人々の一人一人、
気持ちや行動が丁寧に描かれていて、
ひとつひとつの行動にまで合点が行く。
だから、セリフで説明することなく、
ひとつひとつのシーン、
語り過ぎずに、次のシーンに移って行くのだが、
置いてきぼりになった感は全くなく、
ストーリー展開を見失うことがなかった。
その展開は凛々しいくらいスパッとしてた。
その割には予告編はちょっと語り過ぎな気もした。
まあ予告編ではある意味、前半の喪失を中心に語ってるんで、
「そこだけの映画じゃないよ」って感じなんかもしれん。
だとしたら、余計骨太の映画に感じるなあ。
ワシ的にも、後半の後悔や喪失を抱きながら、
少年がすがるように生きていこうとする姿、
何度も逃げ出したくなるけど、最終的には逃げずに、
向き合おうとする姿を丁寧に描いてるところが、
この映画の肝だと思った。
そして、この映画のもうひとつの特徴は映像の美しさ。
ベルギーが舞台なのかな?
主人公の家業、花農家の花畑、その周りの村の風景は美しく、
それが余計に切なさをいたたまれなくする気がした。
ひとつだけ、あれ?と思ったのは、
ストーリーの骨ではないし、
シーンとしては大切だとは思うんやけど、
おねしょした数日後に、よく友だちんちに泊まりに行けるな、
ってことくらいかな。
ワシなら、絶対怖くて泊まれません(笑)
「大いなる自由」。
こっちも、骨太で美しい映画だった。
ほとんどのシーンが色彩に乏しい刑務所なのに、
それが却って美しく見えて、
理不尽には徹底的に抗う主人公の姿勢を浮き立たせているような気がした。
ドイツの刑法175条、ナチスの負の遺産は、東ドイツ、西ドイツ、
どちらにも受け継がれてしまったらしい。
映画の意図とは違うかも知れないけど、
ワシがドキッとしたのは、アポロの月面着陸のシーン。
ワシも朧げながら、テレビで観てたことを覚えてるシーンだ。
ナチスの収容所に入ってた主人公が、
まだ壮年と言っていい時代に、刑務所のテレビでこの映像を観ている。
ワシの感覚としては、ナチスの暴虐は遠い昔のように思えるのだが、
ワシの生まれるたった17年前に、この世に存在してた出来事なのだ、
今の時代と地続きの出来事なのだ、
ということを、ガツンと突きつけられた。
主人公の男性は、凛々しい。
ただ恋愛と性欲の対象が男性、
というだけの理不尽な理由で投獄されるのに、
他人に対する思いやりと、自分の正しいと思うことを貫く姿勢がびくともしない。
主人公はホモセクシャルだけど、
ワシは、この映画を性欲を超えた友情の映画だと思いたい気がした。
ストーリーの中で主人公に絡む3人の男性、
その中で、一人本来はヘテロセクシャルの男性が出てくる。
その男性と主人公の関係が、性欲を超えて美しいと思った。
※ここから少しネタバレあります。
最後、刑法175条は法改正があって、
主人公は、釈放されるのだが、
塀から出てきた主人公は、観てるもん誰もが、
アッと驚くような行動に走り、
凄まじいまでの余韻を残したまま映画は終わる。
ワシもちょっとキツネにつままれたような気分になったが、
あとあと考えると、これは「まだすべてが終わったわけではない」
ということを語ってるのかもしれんな、と思った。
最初は、まだ収監されてる人への思慕かな?と思ったけど、
そんな都合よく会えるはずもないし、
そんな単純な話ではない気がしてきた。
その問題は、今も、ヨーロッパでも、アメリカでも、日本でも、
終わったわけではないし、
国によっては、この時代のドイツよりも、
もっと苦しんでる人もいるのだろう。
ラストのシーンは、「この映画の問題は、今の問題でもあるんだよ」
ということを観客に感じさせる強烈なメッセージなのだと思う。