菊地凛子さんは、すごく良かった。BBBムービー「658km、陽子の旅」。
久しぶりに平日なのに両側に人のいる席で映画を観る。
何かと話題らしい映画「658km、陽子の旅」を観てきた。
コミュ障の人のロードムービーってのは、新鮮で面白いし、
シーンシーンの描写は、ザラザラとしててリアルなのに細やかで、
さすが「海炭市叙景」の熊切和嘉さんだと思った。
音楽もすごくいい。
、、、けどなあ、ワシが海外に住んでる外国人で、
日本の地理とか、状況とか、全然知らなかったんなら、
手放しで褒めちぎってた気はするんだけど。
シーンの絵面優先なのか、脚本にいろいろと無理を感じてしまって。。
※ここから、ややネタバレ、含みます。
最初はええ感じで観てて、
「なるほど、あのスマホうっかり落とすシーンは、
ここに繋がってるのか」とか、
感心しながら観てたのだが、
最初のヒッチハイクの車から降りるシーンあたりから、
なんか怪しさを感じ始めた。
「なんでこんな次の車探しにくそうで、
食料もなさそうなところで降ろすんやろう。
嫌がらせとしか思えない。」
そう思いながら観てると、次々と疑問が膨れ上がる。
そもそも、東京から青森目指してて、
最初は車で順調に向かってたはずなのに、
なんで、いつの間にか太平洋側におるんだろう。
東北自動車道からスタートじゃなかったんか?
しかも、一日経って富岡町って、
ルート、だいぶ右に傾いてないか?
しかもあれだけ移動したのに、まだそこなん?
まあ、ヒッチハイクで、思ったところに行けてないってのは、
あるのかもしれんが。
それより「そらポスターみたいな、
夜明けの海にポツンとおるビジュアルの方が、絵にはなるわな」
ってのが、優先されてるような気がする。
それ以降の動き、今までと打って変わって、すごいスピード。
(映画の中では同じペースですが、あとあと考えると、
理屈的にはすごい移動スピードなんすよね)
Googleマップで富岡町から青森って検索すると、
まっすぐ行って、車で7時間10分、言われたけど、
ヒッチハイクであれだけ乗り継いで、
間に合うって、どんな魔法なんやろう。
他にも、疑問に思うことが多々あった。
なぜ、自分はキャッシュカード持ってない。
これも、「そもそも働いてないので貯金がないのだ」と言われれば、
それまでなのだが。
だったら、旅に出る前、日々の暮らしで、
生活資金に困るシーン入れとけよ、と思ったりもする。
それどころか、引きこもりなので、
ネットショッピング思いっきり、してたやないか。
絶対、貯金あるはずやないか、
と思ったりも。
ほんで、ヒッチハイクに協力する人みんな、
親切な人として描かれてるのに、なんで、景色はええけど、
次に繋がりにくそうなとこで降ろすんやろ?
最後のバイクの兄ちゃんなんて、
目的地の近くまで来てたんちゃうの?
家まで送ったれよ。
なんであんな雪の中、なんもないところで降ろすのか。
それで言うと、本人も、冬の寒い時期に、
町におったのに、わざわざ海岸に行って、
風の強い波打ち際で、夜を過ごす理由がわからない。
それを「コミュ障だから」って理由にするのは、
コミュ障に頼りすぎだと思うし。
何より残念やったのは、コミュ障ってゆーのを、じっくり描いてるのに、
今まで、語らずに感じさせてきた陽子の過去を、
最後全部その子に流暢に語らせちゃうところ。
この旅で、陽子が変わったってのは、わかるんだけど、
一日で成長し過ぎちゃうやろか?
これも、シーンの印象を優先するあまり、
物語の背景の骨の部分を、このセリフに全部預けちゃったような気がして、
「全部、陽子頼みかい!コミュ障頼みかい!」と思ってしまった。
何より菊地凛子さんの表情や演技は素晴らしい。
表情や、喋らないことひとつで、物語を進めてしまう力があった。
他にもいい要素、たんまりあるだけに、
ワシ的には、残念でならない映画でございました。