確かに熊は、いなかった。もっと恐ろしいものが、いたのかもしれない。BBBムービー「熊は、いない」。
すごく重層的な、もう美しいと言ってええかもしれんような
構成を持った映画やなあ。
ジャファル・パナヒ監督の撮る映画の中の話からも現実が飛び出し、
監督自身にも事件が起こり、
監督の滞在する田舎の村でも、
因習から、とんでもないことが進行する。
フィクションなんか、ノンフィクションなんかもわからんけど、
少なくとも、これがイランの現実であるだろうことは、
背筋をなんか冷たいものが走ることで、わかる。
こんな感覚、現実に基づいてないと感じるはずがないと思う。
実際、ジャファル・パナヒ監督は、映画を創ることも、
国外に行くことも禁止されてるのに、
この映画を撮り、そのあとで逮捕されたらしい。
因習、政府の圧力、イランの人は、
二重にも三重にも、行動を縛られている。
「熊が出るので危険」と言われてる道に、
映画の中では熊は出なかった。
けど、映画の至るところに、
熊より、もっと恐ろしいものが現れていたような気がする。
こんな重いテーマの映画を撮りながらも、
映画のそこかしこに、ユーモアを散りばめる
ジャファル・パナヒ監督は、
本当に素晴らしいと思う。
パナヒ監督の映画を、もっと観たいなあ。
先日映画監督デビューした息子さん、パナー・パナヒさんの
「君は行く先を知らない HIT THE ROAD」も素晴らしかった。