奈良ミュージアム三昧①「不染鉄展」@奈良県立美術館。
昨日、3月とは思えないくらい寒くて風もきつかったんやけど、
天気は良かったので、奈良まで足を伸ばしてきました。
行きは近鉄で。
外は真冬の寒さだったけど、
天気がええので、昼過ぎの車内は温室のような暖かさ。
石切の手前の高いところから大阪見下ろす風景は、
ワシのお気に入り。
六甲まで見渡せる天気の良さでした。
奈良について、奈良公園横切って、目的地を目指します。
あちこちに黒い塊。
奈良公園なので、やつらの排泄物か?
思いましたが、無数の松ぼっくりでございました。
ひとつめの目的地は、奈良県立美術館で開催中の「不染鉄」展。
これが昨日までだったのが、「寒いけど、やっぱ行こう」と思った理由のひとつでした。
奈良にゆかりの深い人らしいんですが、
あまり存じ上げない方で、
「変わった名前やなあ」ということが、
気になっていた人でした。
調べると、本名は「不染哲治」さん。
「不染」という変わった苗字は、
お父様が、明治の平民苗字必称義務令で付けたらしいです。
お父様は仏門の方だったようなので、
仏教用語の「不染、煩悩に汚されないこと」から、
付けはったんかもですな。
奈良県立美術館、初めて行ったんやけど、
建物、部屋、展示の仕方、トイレに至るまで、むっちゃ昔の公共施設でしたわ。
なんとなく、通ってた小学校とか、思い出しました。
特にクレゾールっぽいこびりついたようなトイレの匂いとか。
昔の美術館らしく、展示物は一切、撮影禁止。
そこは、ちょっとくらいアップデートしてもええのにな、
とは思いました。
初めて観る不染鉄さんの絵、
上手くて緻密なんすが、
建物描くと、ほぼ真正面、パースか書き割りみたいで、
あまり面白目を感じない。
几帳面な人かな?
と思って観ていくと、
若い頃描いた富士山の絵とか、伊豆大島、式根島の海村とか、
遠近とか、モノのサイズとか、パースが、
すごく、むちゃくちゃなのもあって、
それがすげえ面白くて、それを観た時から、
ワシにスイッチが入ったような気分になりました。
富士山、山麓にある家の大きさからしたら、
天保山と変わらんくらいの標高やん!思ったり、
緻密な風景画と思ったら、空としか思えないところに漁船があったり、
魚が泳いでいたり、
なんかむっちゃ楽しい。
あと、奈良の風景とか、繊細に描いてるのに、
岩山だけは異様にゴツゴツとグロテスクとも思える感じなのも、
気になりました。
あと、なんかマッシュルームみたいに見える、
藁葺きの田舎家の描き方とか、それを焼き物にしたもの、
薬師寺の東塔の刺繍とかも面白かったです。
けっこう多才な人でもあるんやな。
「年とともに、だんだん大人しくるなあ」、と思ったけど、
奥さんを亡くした晩年に、また伊豆を描き出した頃から、
なんやストッパーが外れたみたいな勢いで、
また面白くなってきて、
「この人の人生でも、あの頃が一番楽しかったんかもしれない」思いました。
そう思うと、なんかこの人を近く感じて、嬉しくなりました。
きっと、いろいろ胸の内に、相反する複雑なものを抱えてはったんやと思うんやけど、
人間的にも、なかなか面白い人を知ることができました。