映画「共犯者たち」

かつてノ・ムヒョンさんが大統領に就任したとき、
大統領は放送局の社長に
「大統領の職にあるうちは、あなたと連絡を取らない。」
と言ったそうである。
癒着に繋がる危険を自ら絶ったのである。
それほど、韓国の政治とメディアは、
正常に機能してたということか。

韓国全土を巻き込んだ政府による言論統制を描いた
ドキュメンタリー映画「共犯者たち」を観てきた。

その健全な状況は一変する。
イ・ミョンバクさんが大統領になり、
メディアのスクープで閣僚が辞任せざるを得なくなったときから。
ある放送局では、圧力で社長を解任し、ある放送局では辞任に追い込む。
そして、政権寄りの人物が社長に就任した会社は、
次第に牙を抜かれ、政府の広報機関に堕して行く。

その挙句がセウォル号事件の「全員救助」の大誤報であり、
チェ・スンシル・ゲート事件の隠蔽に繋がったようである。

しかし、局員たちは、なすすべもなく、それに従ったわけではない。
経営陣の指示で局内になだれ込んだ警察への逮捕者まで出るほどの抵抗。
上層部の指示に従わずスクープして放送。
徹底的なストライキ。

不当にも解雇された記者は民間の協力を得て、
自主放送局を立ち上げ、告発し続ける。
その代表が、この映画の監督のチェ・スンホさんだ。

のらりくらり発言を交わす主犯、共犯者たちを徹底的に追いかける。

そして、この映画は、国を変えてしまう。
この映画を観た現大統領のムン・ジェインは、
この言論統制の廃止に繋がる「国家情報院の改革」を公約に掲げ、
チェ・スンホさんは、かつて自分を追い出した会社の
社長として、復帰を遂げるのだ。

すぐ隣の国で、これほどのことが起こってるとは、
それほどよく知らなかった。
そして、この状況は、ワシの住む、この国のメディア状況と
なんと似ていることか。
お隣さんの弾圧があからさまな分、
弾圧された側も、きっぱりと抵抗して、
状況を変えるまでに至ったのではないか、と思うと、
こちらの国の方が、より絶望的なような気もする。
弾圧、抵抗とわかりやすい対立関係になく、
圧力、忖度、懐柔など、真綿で締め付けるように、
マスコミの牙を抜いていった分、はっきりと抵抗もしにくいが、
結果としては同じになってるのではないか。
言論は統制され、テレビ局は政府広報に堕してるのではないか。

この映画、皆さんに観て欲しいが、
特に新聞社やテレビ局に勤める報道関係の方に是非観て欲しい。

ストライキのとき、テレビ局員が叫ぶ中に、
印象的なフレーズがあった。
正確には覚えてないのだが、
「政府に供するのではなく、国民に供する」というようなフレーズ。
考えてみれば、当たり前なのだが、
これを叫ばなければならない状況というのは、
民主主義にとってかなりヤバイ状況なのだと思う。
そして、我が国も、それを叫ばなければならない状況に
さしかかっている、とワシは思う。

同じ監督のもう一本の映画「スパイネーション」も
是非観てみたいなあ。

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