この町を「リッチランド」と名付けるセンスが怖い。BBBムービー「リッチランド」。
なんだか現実味のない白い光景をずっと観ていたような気がする。
これが、本当にドキュメンタリー映画なのだろうか。
現実の光景なのだろうか。
リッチランドは長崎に投下された核爆弾のプルトニウムが精製された
核燃料生産拠点「ハンフォード・サイト」に働く人たちが住むベッドタウン。
現在は稼働をやめているが、第二次世界大戦以降も、
核兵器を生産するための拠点として、
栄た町らしい。
映画「オッペンハイマー」にも出てきた町だ。
そこを「リッチランド」と名付けるセンスが、
まず、恐ろしいなあ。
町の人たちは、第二次世界大戦を勝利に導き、
冷戦時代を支えた町に誇りを持ち、
キノコ雲や爆撃機が高校のフットボールクラブのシンボルだったり、
そのフットボールクラブの名前が「ボマーズ」だったりする。
だけど、川の魚は食べなかったりもする。
そして、現在は国立の歴史公園として、多くの観光客を集めている。
なんだか、すごい矛盾に満ちた町なのだけど、
やっぱりそこにも健康被害に苦しむ人がいて、
「日本に次ぐ被爆国って、もしかしたらアメリカなのかも」と思ったりもした。
矛盾に満ちたこの町の光景が寒々しく見えてしまうのは、
アメリカという国がネイティブアメリカンの土地を奪って、
できた町ということを知ってるからなのか、
この町に住む人の作った核燃料が、長崎の幾多の人を殺し、
数えきれない核兵器を生み出したことを知ってるからなのか。
町に住むのは、他のどの町にもいそうな、
気のいいおじいや、おばあだったりもするし、
町の人は、当初は自分たちが何を作ってるかも、
分かってなかったらしいのだが。
少し、希望が持てたのは、この町にもちゃんと問題意識を持つ、
学生たちがいて、真剣に話し合ってるシーンを観たからなのだろう。
けど、なんだか物凄い徒労感を覚えて、
観終わった後、疲れ切っていた映画ではあった。