民主主義の根本を見据えた映画だと思う。BBBムービー「流麻溝十五号」。
ワシが生まれる10年ほど前、
ほんの70年前の台湾で、
こんなあからさまな人権虐待があったことは、
今まで知らなかった。
台湾にしたら、大陸での共産党との戦いに敗れて、
台湾島だけは、守りたい、というナーバスな時期だったので、
言われてみれば、あり得る話だとは思うけど。
いわゆる白色テロの時代を描いた映画。
どこの国でも強制収容所というのは、
まず間違いなく、人権虐待の場になってしまうのだなあ。
そして、ここで行われているのは、
いわゆる思想教育。
共産主義的な考えを一切排除して、
為政者に都合のいい国民に改造しようとする。
「考えること、それ自体が罪」と言われれば、
人間には、逃げ場がない。
体の自由は奪われても、せめて頭の中、心の自由があれば。
それすら奪われると、
そこに生きている意味など見出せなくなる気がする。
そういう絶望的な状況の中、
この映画は、一人一人の心の動きや、
この状況でも生まれるほのかな恋愛感情なども、
つぶさに描写してて、見事だと思う。
だけど、国として、思い出したくないような、
黒い歴史をきちんと描いて、
その映画が、ヒットして、たくさんの人に観られるという
台湾の状況は、かなり素晴らしいなあ、とも思った。
過去を見つめることが、未来を築くこと、
という言葉を、改めて思い出す。
決して国民党寄りとか、大陸本土の中国共産党寄りとかではなく、
「自分の心の中だけは、自分のものだ」という主張の、
民主主義の根本を見据えたような映画が、
ヒットする台湾が、かなり羨ましい。
もう一度、観たい映画です。