映画「安魂」。

日中国交正常化50周年で日中合作で制作された映画「安魂」。
美しい映画だった。
構図、ストーリー、物語の納め方、すべて美しく丁寧にまとめられた良作だと思う。

中国を舞台にした映画だが、
この親子関係は、国を超えて、時代を超えて、
普遍的なものなのではないか、と思う。

自分が成功しただけに、子どもに生き方を強制してしまう父親。
子供を、本当に一人の人間として見る、というのは、
難しいことなのかもしれない。

ワシの場合、大学在学中に父の方が逝ってしまい、
それまでは、ほとんど、父と生き方について、話したことがなかったので、
こういう相克に入る前にゲームセットになってしまった感はある。

ひとつだけ思い出すことがある。
ワシは、子どもの頃から万葉集の学者である父の影響で、
日本の歴史に興味が深かった。
自然、文学部に行って、歴史を勉強しようと思ってたのだが、
それが知らない間に父にコントロールされてるような気分になって、
高校3年の時、父に「就職に有利らしいので、経済学部に志望を変えようと思う」と、
言ったことがあった。

父はしばらく考えたのち、
「就職に有利だからと言って、やりたくないことをやるのはおかしい。
大学とは、好きな学問をやる場所だ」。
自分のあとを追いかけてほしい、とかそんなことではなく、
もっと根源的なことを言われたのが意外で、ビックリもしたが、
何か、目が覚めたような気分にもなった。

その言葉は、今もワシの中に生きてる気がする。
進む方向に迷った時、何もかもが嫌になった時、
父の、あの言葉を思い出す。
父は、自分に残された短い時間の中で、
ワシの一生に残る言葉を、きちんと残してくれていたのだな。

この映画を観て、そんなことを考えていた。

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