何が、軍国少女の価値観を変えたのか。映画「島守の塔」。

※ネタバレ含みます。ご注意ください。

価値観を変えるというのは、すごく大変なことなんだろう。
学校でも、職場でも、生活のほとんど全部のシーンで
「お国のために命を捨てる」ことが、
人として一番正しいと教えられた少女が、
家族や、近所の親しい人が爆撃で一気にやられても、
妹が自分の膝の上で逝っても、変えられなかった価値観。
その軍国少女に「生きろ」という言葉が土壇場で届く。
すると、小さい頃から聞かされていた「命どぅ宝」という言葉が、
「お国のため」より、根源的な言葉だったことに気づく。
島守の塔」という映画は、簡単に言うと、
そういう物語だった気がする。

基本は、実在の人物、沖縄戦当時の沖縄県知事島田叡(神戸出身)さんと、
彼を支えながら、共に散った、当時の沖縄県警察部長、荒井退造(栃木出身)の
実話をベースにしている。
タイトルも摩文仁の丘の中央に建つ、
沖縄県職員の戦没者を慰霊する「島守の塔」に由来していて、
その塔の横には、島田氏、荒井氏終焉の地の碑もある。
実際は、ご遺体は発見されておらず、終焉の地も特定されていないのだが、
内地出身のお二人の沖縄県民を思っての行動に感謝する人たちのために、
最後に生存が確認されていた壕の前に、島守の塔と終焉の地の石碑を建てて、
祈る場所を作ったのだろう。

先ほど言った軍国少女は、島田さんの助手、世話係という
役回りの創作だと思うのだが、
戦後に生き残った彼女を登場させることで、
儚く散った幾万の命の尊さ、惜しさが、くっきり見えて来た気がした。
いい脚本だなあ。

ワシは、島田さんのドキュメンタリー映画「生きろ」を観たことがあったので、
島田さんのことは説明なくてもわかったが、
複数の人物に焦点を当てたストーリー映画になってる分、
島田さんが、どんな人か、
どれほど、沖縄の人のことを思って行動したか、などが、
知らない人には、分かりにくいかもしれない。
この映画で島田さんに興味持たれた方は、
ぜひ「生きろ」も観てほしい。
「生きろ」についてのワシの感想は、こちらです。

この映画、役者さんもすごく良かった。
萩原聖人さんとは、村上淳さんとは、吉岡里帆さんとは、こんな役者だったのか、
と正直ビックリした。
何か、演技を超えて、この映画を伝えたい誠意みたいなものを感じてしまった。

「命どぅ宝」。本当に命以上に大切なもんなんてないと思う。
国、なんて基本的には、ひとつひとつの命を守るための存在で、
その国のために命を差し出す、なんて、本末転倒の矛盾だと思う。
人の命がなければ、国そのものが存在しない。
そんな実体のないものを、命を懸けてまで守る理由なんてあるのだろうか。
ましてや、国を守るつもりが、実際は、国を滅ぼす方向に進んでしまった、
先の大戦で。。

とか思いながら映画館を出ると、大阪駅前では、街宣車が、
「何があっても日本を守り抜かねばなりません。」と言ってる。
今は、どの時代なんやろ?
映画観てるうちに、ワシは戦前に紛れ込んでしまったのか?
とか思ってると、その街宣車が続けて、
「憲法9条では平和は守れません」と言ってた。
どうやら、今は戦前ではないようだ。
けど、「国のために命を捨てるのが正しい国民のあり方。
それこそが個人の幸せ」という
基本的考え方は変わってないのかもしれない。

と、暗澹たる気持ちで歩いてたら、
大阪駅前で志生太くんが心からの笑顔を浮かべながら、
バケツドラムを叩いていた。
幸せの正しいあり方を見た気がして、
やっと、ホッとできた。
志生太くん!ありがとう!!

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