「友達がほしい」で感じる「語り部カニコーセン」。

昨日のライブの感想でもちょろっと書いたのだけど、
カニコーセンくんが、時代を切ってしまう切れ味が凄いなあ、と感心してしまう。
特に、この歌「友達がほしい」。
まずは、音源を。

タイトルそのものが、ネットで、同好の人たちを探す
今の時代を象徴してるようにも思える。

歌詞を文字にしてみますね。

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ひとりぼっちは寂しいけど
人間は好きじゃないから
ロボットみたいな友達がほしい
病室のベッドでファービー人形
抱いてるお母さん 笑ってる

ひとりぼっちは寂しいけど
人間は好きじゃないから
ロボットみたいな恋人がほしい
インターネットで顔のない誰かを
論破できたよ よかったね

ひとりぼっちは寂しいけど
人間は好きじゃないから
ロボットみたいな家族がほしい
言うこときかない家族をタコ殴り
DVお父さん 影が真っ黒

ひとりぼっちは寂しいけど
人間は好きじゃないから
ロボットみたいなバイトがほしい
ロボットみたいな社員がほしい
ロボットみたいな国民がほしい

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モータウン風の優しく温かなイントロなのに、
歌詞は、読めば読むほど怖い。
「一人は嫌だけど、相手に人格は必要ない。
友達でも、恋人でも、家族でも、仕事仲間でも。」
それが果ては、大きく、国民にまで拡大している。
現在は、ここに「信者」も加わっている。

これって、今の時代を覆う空気なんじゃないかな、と思う。
同好の友達にしろ、セックスパートナーにしろ、
スマホでは相手探しのメッセージが飛び交っている。
それは出会い系アプリだけでなく、
主戦場は、Twitterや、ネットゲームなのかもしれない。
でも、相手は自分の言うことを聞いてくれさえすれば、
人格は必要ないのかもしれない。
相手のいる、一人相撲みたいなもんか。

今の時代と象徴的にシンクロしてるフレーズのひとつが、
「インターネットで顔のない誰かを
論破できたよ よかったね」やと思う。
これは、最近の辺野古に関する発言で炎上している
誰かを思わせるなあ。
彼も、結局は相手を求めてネットを彷徨っているのだろう。
その「相手」とは論破する相手であり、
賛同してくれる相手であり、
反対意見を出して、新たな論破をさせてくれる相手。

「論破」と言うよりは「揚げ足取り」で、
ひとつ相手の矛盾点や、齟齬を見つけると、
それを論破と言ってしまう。
安い「論破」ではあるが。
そして、そこに、相手の人格は必要ない。
自分の主張すら、必要ない。
ただ、論破(と彼が思うもの)できそうなポイントが見つかれば、
そこを突くだけなのだろう。
だから彼が、某宗教団体のことで、
まともなことを言ってたとしても、
「たまたまそれが論破(と彼が思うもの)しやすかった」
というだけのことなのだろう。

そもそも、論戦や論破は、自分の意見で違う意見の人を納得させる
ためのものなのだと思うのだが、
彼のような人の場合、
目的が論破(と彼が思うもの)そのものになってしまってるので、
論破(と彼が思うもの)したあとの、相手の反応は、
もはや意味をなさない。
それがカニコーセンくんの歌詞「よかったね」に繋がる気がする。
すごく心がなくて、他人事のようで、印象的な「よかったね」や。
実は、この文章を書こうと思ったのも、
この曲を聴いてから、ずっと引っかかってた、
この「よかったね」のワシにとっての面白さの意味が、
ようやく、自分の中で、言語化されてきたからなのですわ。

さらに続く「ロボットみたいな信者が欲しい」
「ロボットみたいな国民が欲しい」も、
すごく今の日本の状況と重なってくる気がする。
信者を集金マシン、国民を集票マシン、集税金マシンと考えると、
そこに感情や人格は必要ない。
それを実行に移したしっぺ返しが、
今の状況を生み出しているようにも思える。

カニコーセンくんが、意識的に、このような意図を持って、
この曲を創ったのかどうかは、わからない。
世の中の状況を裏側に至るまで、公平に、真っ直ぐに、見られる知性と、
それを表現として形にできる能力を持ったカニコーセンくんが、
自分が無意識に感じてることを、
ふと曲に落とし込んだら、こういうものができてしまったのかもしれない。
いや、カニコーセンくんのことだ、
全部自覚的に、世の中を見据えて創っているのかもしれない。
(ワシはたぶん、後者だと睨んでいる)。

いずれにしても、カニコーセンくんは、
添田唖蝉坊や添田さつき、クレイジーキャッツや青島幸男、
高田渡に繋がる、歌で世相を切る、
現代の語り部なのではないか、とワシは思っている。

カニコーセンの音源はこちらで。
「友達がほしい」が収録されてるCD「みんなヤバくて みんなE」はこちらで。
名曲揃いの11曲、30分くらい収録されてて千円のお値打ち価格です。

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