三島有紀子さんの心を三つの島に託した物語なのか。BBBムービー「一月の声に歓びを刻め」。
たぶん、ひとつの出来事を、3つの側面から捉えてみようという試みの、
オムニバスなんだろうな。
今を生きよう、これからを考えよう、過去のことは、全部栄養にして、
明日を作っていこうとしても、
どうしても過去の事件に、今を動かされてしまう人間の悲しいサガみたいなもんを
語ってるのだとは、思う。
そして、それでも、それを乗り越えて、生きていこうとする、
もがくような気持ちを描こうとしてるのだろう。
すべて推定になってしまうのは、三島有紀子監督の寡黙な語り口から、
監督のうちなる心を、観てる人が想像するしかないからだ。
3編とも、キャスティングが素晴らしい。
観る前は「この人が、こんな役を?」と思ってしまうのだが、
観た後は「この人でなければ、この役をできなかった」と思ってしまう。
三島有紀子さんは、自分の中にあるこの問題を、
一度は描かないと、その向こうには行けないと思ったのではないだろうか。
だから、人には分かりにくい、内省的で地味な作品でも、
きちんと仕上げなければならなかったんだと思う。
そして、それは、すごく勇気のいる、
痛みを伴う作業だったのだろう。
この作品を、今、世の中に出すというのも、
少しはわかる気がする。
今、日本も男性の価値観が中心の社会から、
少しずつ変わろうとしている。
そのタイミングで、この映画を世に問う意味は、
小さくない気がする。
舞台が三つの島なのは、監督の「三島」有紀子さんのトラウマを、
三つに分けて描いた物語だからなのかもしれない。