増山実「空の走者たち」。

増山実さんの「空の走者たち」を読み終わって、もう一度読み直している。
前作「勇者たちへの伝言」のときも、そうした。

増山さんの作品は、小さな流れが集まって、だんだん大きな川になって
ストーリーが展開して行くような感じがする。
だから、一度読んだときは、ほんの小さな流れで
気づかなかったようなことが、
物語の重要なポイントになってたりするので、
どうしても、読み終わった記憶が鮮明なうちにもう一度、
読んでみたくなるのだ。

そして、その流れは、事実とフィクションを交えながら、
時代を超え、50年前に流れ始めたもの、
今、流れているもの、そしてこれから流れるであろうものまでが、
一緒になって大きな川になっていく。

出会うはずのなかった人々も直接的、間接的に出会い、
お互いに影響を与え合っていく。
そこには、死者と生者を明確に分ける概念すらないような気分になる。
そして、死者は増山さんによって、新しい生命を得るかのようだ。

この物語の主人公は1964年の東京オリンピックのマラソンで
銅メダルを獲得した円谷幸吉さん。
円谷さんというと、あの遺書が有名で、
ワシもいろんなところで「おいしゅうございました。」という
フレーズを使わせて頂いてる。
そのイメージは、厳格な父に育てられ、自衛隊所属で、
周囲に言われた通りに走る自分のない人、
国民の期待の大きさに押し潰されて、メキシコオリンピックを前に、
自殺した悲劇の人、真面目過ぎて悲壮感漂う人、と言った感じだが、
この小説の中では、正反対で、生き生きと朗らかに笑い、
自分の意思をちゃんともった
明るい青年として、生き返っている。

それはどこまでが事実なのだろう、どこからがフィクションなんだろう、
と気になったので、今日、谷六であった
増山さんのトークショーに行って来た。
本当に楽しくて、時間があっという間に過ぎるトークショーだった。
そして、幸吉さんの実の姿は、一般的なイメージより、
この小説に近いんじゃないか、と感じた。
少なくとも、増山さんはそう確信している、ということが分かって、
本当に嬉しかった。

それくらい、この本で語られる円谷幸吉さんは魅力的で、
惹き付けられる人物なのだ。
そして、小説自体も、早く続きが読みたくなる面白い本なのだ。

前作の「勇者達への伝言」について、Faebookで書いたことが縁で、
増山さんとは、Facebook上の友だちにはなっていた。
よく行くバーが同じで、音楽の趣味も重なるところがあったのだが、
実は、お会いするのは、今日が初めて。
増山さんの方から気づいて、ご挨拶頂いたのが、
すごく嬉しかった。
今日は、サイン会などもあって、お忙しそうだったので、
「今度はアフターアワーズで」と言って帰って来た。

ということもあったので、今日、この文章を書いてみたが、
実は前作「勇者たちへの伝言」については、二度読んでから、書いた。
だから、一度しか読まずに書いたこの文章を今、読み直すと、
「まだ、消化しきれてないなあ」と感じてしまう。

読み直してから、もう一度、書きたいな、と思う。
そして、もう一度書くまでに、是非、増山さんと
アフターアワーズで酒を飲みながらお話したい。

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