観たことない映画、ではあるのだが。BBBムービー「首」。

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ちょっと長時間映画で、人気映画ってこともあって、
なかなか行けなかった「首」、ようやく観てきました。

その長時間を退屈させないエンターテイメント性は流石。
役者さんも、小さな役に至るまで、すごい人を揃えてるし、
その人たちが、みんな、ええ演技してはる。
他の映画では目にすることのない、
北野武さんならではの、鋭く新鮮な暴力性もあるし、
大人数ロケの撮影や、クオリティ高いCGもあって、
どでかいスケールの申し分ないエンターテイメント時代映画だと思う。
特に、あの頃の常識のはずなのに、
今までの戦国時代映画では、あまり取り上げられてなかった、
衆道の関係を物語展開の柱に置いてるのに、
その恋愛関係をテーマにしてない映画は、初めてなんじゃないだろうか。

じゃあ、そのテーマは何かって言うと、
戦国時代だからこそ、剥き出しになった、
人間の利己性、みたいなもんじゃないか、と思った。
恋愛関係にあって大切にしてた人すら、
己の利益のためには、最後に見捨ててしまったり、
衆道の相手として手に入れるために、
力で捩じ伏せたり、
下剋上の時代なので、
もちろん主人さえ、陥れる。殺す。
戦国大名から、一介の農民まで、
利他とは、程遠い、利己のための、
騙し合いに次ぐ騙し合い。

最後まで、それが壮絶に続くんやけど、
きっと映画が終わっても、まだ壮絶な利己と利己との
ぶつかり合いは、続いてるんやろなあ。

けど、それがテーマやとしたら、多少ストーリーが荒いような気もした。
例えば、モノのように順番に殺されていく、家康の影武者たち。
主人のために忠誠を誓い、命を捨てるあの人たちの利己心みたいなものも、
どこかに描かれてたら良かったのにな、と思ったり。

少し物足りなく思ったのは、そういう壮絶な時代に生きてた人たちの、
孤独とか、哀しさを感じられるシーンが、なかったことかなあ。
「ソナチネ」とか、昔の武さんの映画には、
そういう暴力と背中合わせの悲しさや、詩情が漂ってて、
そこが好きやったのになあ、
と、個人的には思いました。

純粋に、日本で一番利己心が剥き出しになったであろう時代を舞台にした
暴力エンターテイメント映画として、観ればええのかなあ。

【追記】
友だちから「なるほど!」と思う意見を聞かせていただいたので、
書いておきます。
その人が言うには
『時代劇の「平気で人を殺す狂気を賛美する」という違和感を、
殺しのオンパレで逆説的に批判して見せてくれた初めての映画なのかも』と。

なるほどですね〜。
ワシ、残虐シーンが苦手なので、そこまで思い至らなかったですが、
あそこまで露悪的に殺すシーンを描くことで、
「結局は、残酷な殺人やん」ということを言ってるのかもしれない。
そういう意味では、どこかファンタジーに見えてるところのあった
時代劇をリアルに見せようという映画だったのかもしれない、
と思えてきました。

となると、あんなに生々しく、死体や生首を描く意味も分かるし、
あのラストのシーンも納得できますね〜。
松永さん、ありがとうございました。

あと、書き忘れてましたが、ワシの一番好きやったシーンは、
安国寺恵瓊が後ろ向いて、ベロを出すシーンです。
あれこそ、利己的に動く人間をコミカルに描いた名シーンや、と思いました。

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