分かんないまま、記憶に居座る、好きになる。BBBムービー「WALK UP」。
ホン・サンス監督の作品は、何本か観てるのだが、
いつも観終わったときは「分かんないなあ」と思う。
けど、何日かすると、次第に心の中での存在感が増してくる。
理解が進むというわけではない。
「分かんないなあ」のまま、記憶に居座り、大きくなっていくのだ。
今回の「WALK UP」は、そんな気分の頂点を極めた感じがする作品だった。
「これは同一人物なのか」
「同じ人物の、違う時間を切り取ったものなのか」
「パラレルワールドみたいに、並行して進む、少しずつ違う物語なのか」
それは、今でも分からないし、
もしかしたら、分からないままで構わないのかもしれない。
ふと思う。
もしかしたら、これは、監督の脳みそが、
監督も「何創ろう」としてるか分からんまま、
溶け出してるようなものなのかもしれない。
一階一部屋の地下一階、地上四階のビル、
そこに、こういう人がいる。
それだけを設定して、
頭に浮かぶ、いろいろを、そのまま描いていく。
スタッフも、役者も、シチュエーションはわかってても、
映画が何を目指してるのか、
分からんままなのかもしれんなあ、思う。
そもそも、この映画が、何かを目指してるのかどうか、
もしかしたら監督自身が
「映画で、なんかを目指すなんて、ちゃうんちゃう?」と、
思ってるのかもしれない、
とか、思ったりも、する。
では、ワシは何を求めて観にいくのだろう。
それも、分かんないなあ。
けど、きっと、また新作が出たら、
分かんないまま、観にいくような気がする。
今日で、観て数日、やっぱり観た直後より、
今の方が、この映画の存在感は、ワシの中で大きくなってるし、
それに比例して、この映画を好きになっている。
けど、字幕があまりにも観づらいところがあって、
少し、きつかったなあ。
基本的に会話劇。
向かい合った男女のワンカット、フィックスでの長回しが、ほとんど。
ひとつひとつの会話には、それほど意味はないのかもしれないが、
新しいシーンで字幕が見づらいと、
「ああ、このままあと10分くらい、ずっと、このままなのかー」と、
字幕を読むのを、放棄したくなる気持ちになることが何度か。
ある意味、枯れた、高年齢向け映画やと思えるのに、
こんなに老眼を意識してない字幕は、なんとかしてほしいなあ、と思った。
ちなみに「WALK UP」とは、エレベーターのない、
小規模ビルのことを言うらしい。